Wathematica アドカレ企画〜最近話題のバイオインフォマティクスってなあに?〜
こんにちは!早稲田大学理工系学術サークルWathematica所属,学部1年生のふりゅーげると申します!
今回は当サークルのイベントの一環として、「バイオインフォマティクス」についてご説明したいと思います.
このテーマを選んだ理由は,生物系学問の面白さを皆さんに伝えられたらいいなと思ったからです.僕の知る限り生物というのは不遇な学問で,高校生で専門科目の選択の際に,地学の次に人気のない科目です.それは何故かというと,学校教育の異常なまでの物理化学選択の推進があるためです.理系で受験をするのであれば,物理化学を選んでおけば間違いないーー確かにそれはそうなのですが,ベターな選択を取ることだけが正しいとは限りません.物理化学専攻という選択は,あなたを量産タイプにしてしまう危険性も孕んでいるのです.
それに対し,生物というのは,真に意志の強いものしか選択することのできない,崇高な学問です.この記事があなたを生物屋さんに誘うための一助となるよう,お祈りしております.
※物理も化学も素晴らしい学問です.この記事には,どんな学問も貶める意図はございません.ただ,生物選択者は人数が少ない故に,高校時代に参考書が少なかったり少人数すぎて冷暖房がない教室で授業を受けさせられたりしたこともあって,仲間を増やしたいと考え,過激思想になる傾向が強いです.あらかじめご了承ください.(これってネガキャンじゃない…?)
今回は以下の三段階に分けてバイオインフォマティクスについて語っていきます.難しい原理は極力カットしたので,お気軽に楽しんでください◎(名前だけでも覚えていってね!)
バイオインフォマティクスの簡単な概要
バイオインフォマティクスというのは,その名の通りバイオ(生物学)とインフォマティクス(情報学)が融合した分野です.どんなものに応用されているか,一番有名なものをあげるならゲノム解析が最適でしょう.生物なんぞに興味はない!という数学屋さんや物理屋さんも,一度は耳にしたことがあると思います.
ゲノム解析とは,遺伝情報を解析して,どの遺伝子がどんな効果を生物にもたらすのかを検証する行為を言います.しかし,全ヒトゲノムを解析するヒトゲノム計画は(現在でもマイナーチェンジはあるものの)2003年に終了しています.そんな御役御免感のあるバイオインフォマティクスですが,なんと2027年まで年平均成長率15.8%[1]で成長し続けるという予想が出るほど最近ホットな分野なのです.では,なぜ最近になって脚光を浴びたのでしょうか.
バイオインフォマティクスのここがすごい!
突然ですが問題です.こちらの女性の名前をお答えください.
……正解は,世界的大女優アンジーこと,アンジェリーナ・ジョリーさんです!
当たっていましたか? ちなみに僕はわかりませんでした.
なぜ唐突に彼女を紹介したのかというと,実は彼女がバイオインフォマティクスに深く関わっているからなのです.
アンジェリーナ・ジョリーさんは自身の遺伝子を検査した結果,乳がんの発症率が非常に高くなってしまう遺伝子が存在していることが判明しました.彼女はその結果を受け,乳がん発症を予防するため,2013年に自身の乳房を切除しました[2].今となっては,予防的乳房切除術は一般的に行われるものになってきていますが,当時は『ニューヨーク・タイムズ』誌でも物議を醸したそうです.彼女がなんの処置も取らなかった場合には,今すでに乳がんを患っていたのかもしれません.それは神のみぞ知ることですが,少なくとも,がんに対して発症を予防する技術が存在し,実用可能だというのは,医療の選択の幅を広げるという点で有効です.
そして今そのような医療技術を支えているものこそ,遺伝子を解析して,その遺伝子がどのような効果をもたらすのか知る手段である,バイオインフォマティクスです.
アンジェリーナ・ジョリーさんの例にあったように,現在バイオインフォマティクスは,遺伝子の解析により遺伝病の有無を確認して予防したり,準備を整えたりする手段に用いられています.遺伝病とは,遺伝子がさまざまな原因により変化してしまうことで生じる疾患のことで,基本的に生存に不利な方向で働くことが多いです.(ヒトに限らず,生物の体は非常によくできていることがわかりますね.)
しかし,遺伝病はDNAレベルでの疾患であるため,現在の技術では遺伝病に対する根本的な治療法は存在しません.それに対して,完治させることはできないにしろ,適切な処置を施したり,備えることができるようになったりするバイオインフォマティクスは,20世紀の新しい医療といえるでしょう.
また,バイオインフォマティクスは創薬でも大きな力を発揮します.
薬というのは,薬の分子が体内で巡っている生体分子と競合することで,作用を鈍らせたり鋭敏化させたりすることで効果を発揮します.
薬ではないですが,理工生の皆様おなじみカフェインも似たような作用機序を示します.
脳にはアデノシン受容体という化学物質が結合する組織があって,アデノシン受容体に
アデノシンという物質が結合することで,覚醒作用のある神経伝達物質の放出が抑制されます.つまり,アデノシン受容体にアデノシンがくっつくと眠くなってしまうのです.Zzz…
しかし,カフェインとアデノシンは分子の形が似ているため,アデノシン受容体にアデノシンの代わりにカフェインが結合し,眠くならなくなるのです!
実は,薬もカフェインとアデノシンの関係のようになっていて,作用しているものがかなり多いんです.それにしても,アデノシンとカフェインの分子構造,なんとなく似ているような似ていないような微妙な形ですよね.もっといい眠気覚ましになる物質があるのではないでしょうか?
こんな時にも役立つのがバイオインフォマティクスです! 今までは「もっといい分子があるんじゃないか」と考えて似た分子を作っても,分子の置換基効果などの関係で,うまくいかないことが多くありました.結果,膨大な種類の化合物を試す必要があり,置換基効果まで考えて分子を設計するのにも時間がかかるため,創薬にはコストが多く必要でした.
しかし,バイオインフォマティクスを用いることによって,完成した分子がどんな効果を発揮するのかシュミレートして,候補の化合物を絞り込むことができるようになったのです!
これは創薬会社などにとっては大きな進歩で,更なるビッグデータの解析が,日夜行われているようです.
バイオインフォマティクスを学ぶには?
バイオインフォマティクスを学ぶのに必要な知識は大きく分けて以下の2つです.
バイオインフォマティクスは,一番最初に説明したように,生物学と情報学の融合分野です.
生体で起こっている現象とその状況をデータとして採取し,ビッグデータとして処理するには,重み付けの程度などを考えるために,バイオロジーの知識が必要です.また,機械学習の知識も欠かすことはできません.
現在バイオインフォマティクスには技術者認定試験も存在しているようで,今後更なる発展が見込まれる分野です.進路選びに困っている場合は,一つの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
この記事が,生物学に興味を持つきっかけになったらいいなと思っています.
ここまで読んでいただき,誠にありがとうございました!!
参考webサイト
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